ニュースリリース

2001.09.17


人体の中で1番小さい構造の耳骨を精密に描出できる
マルチスライスX線CT技術の開発について
-世界一の高分解能0.25ミリを実現-


 当社は、X線CT装置で得られる人体の輪切り像の分解能(解像度)を従来の0.35mmから一挙に世界最高の0.25mmまで高めた高分解能CT技術「S-first」を医療法人 耳鼻咽喉科麻生病院と共同開発しました。
 当社は、新技術を搭載したX線CT装置を2003年度に製品化する予定です。

1.新技術の臨床効果

写真1
 共同研究先の耳鼻咽喉科麻生病院では、新開発の「S-first」技術について「臨床上の意義が極めて大きい。人体の中で耳の骨が1番小さい構造をもっており、従来のCT装置ではこの部分を完全に描出することが困難でした。耳の疾患を調べる際に最も重要なアブミ骨の上部構造とその周辺の微細構造を精密に描出することにより(写真1)、耳小骨連鎖異常などの診断を確定できるようになります。この結果、無駄な手術を避けることができ、手術時間も従来の2/3に短縮できます。また、聴力改善手術の成功率も、著しく向上します」と評価しています。

 「S-first」技術は、耳鼻科領域だけでなく、頭部や人体の細い血管や各種臓器などの画像診断にも利用することが可能です。例えば、胸部検査などでは、今まではぼんやりとしていた小さな癌などを精密に描出することができ、早期発見に貢献すると期待されます。
 今後、当社は、頭部・胸部など、人体各部での臨床画像の評価を行なっていきます。


2.開発の背景

 X線CT装置は、人体の周りを1回転してX線を照射し、人体を透過した投影データを計測してコンピュータによる画像再構成により輪切り像を得る装置です。頭部を含む全身の横断画像が解剖図をみるがごとく鮮明に描出することができるので、画像診断装置として現代医学には不可欠なものとなっています。
 近年、成人病の早期発見・早期治療を望むニーズが高まっており、X線CT装置にはさらなる高い性能が求められています。患者への負担を減らし、より高品位な画像をうるために、X線CT装置は大きく3つの方向で技術開発が進められてきました。

1)X線管球が人体の周りを1回転する毎に、1度に2枚以上の横断画像が得られる多断面化(マルチスライスCT)の技術
2)X線管球の1回転当たりのスピードを速め撮影時間を短縮する技術
3) 収集される横断画像の分解能を向上させる技術

 当社は、1)多断面化についてはCT検出器の16列化を行ったマルチスライスCTを開発、2)撮影時間の短縮化についてはX線管球の1回転当たり0.5秒のスキャン時間で、同時に0.5mm間隔でスライスできる世界最高性能を既に実現しています。今回の新技術は3)分解能の向上に関して従来の分解能を上回る世界最高の分解能を実現したものです。
 
 当社は、これらの技術により、CTにもとめられる基本3技術で、業界最高性能を実現することができました。


3.新技術の概要

 今回、新たに開発した「S-first」技術で、従来0.35mmであった分解能を、世界最高値の0.25mmまで高めることができました。
 
 X線CT装置では、体内を透過したX線が896チャンネルに区分されたX線検出器で検出され画像化されます。一般的により分解能の高い画像を描出するためには、1チャンネルの検出器幅を狭くし、チャンネル数を増やした新たな検出器の開発が必要です。
 今回開発した「S-first」では、新たな検出器の開発なしに、X線検出器に装着する短冊くし状のスリット(遮蔽版)とX線から収集したデータを倍化する新画像再構成技術「スーパーインポーズドヘリカルスキャン技術*1」により、分解能の飛躍的な向上を実現しました。

*1スーパーインポーズドヘリカルスキャン技術:0度と180度の位置で検出器を1/4ずらして配置する方法


 短冊くし状のスリットをX線検出器の上に装着することで、検出器1チャンネルの半分を遮蔽することとなり、データの精度は2倍になります。しかし遮蔽された部分のデータは、そのままでは収集できません。この部分のデータの収集には、マルチスライスCTの特性を利用しています。
 4列あるマルチスライス検出器をヘリカルスキャンで螺旋回転させる場合、螺旋回転の進行度合い(ヘリカルピッチ)によっては、その回転軌道を重ねることが可能です。

 この短冊くし状のスリットの効果にくわえて、スーパーインポーズドヘリカルスキャン技術がデータ量と精度をさらに高めています。同技術は、回転するX線管球と検出器の位置関係が180度反対方向でも得られるデータが同じであると言うことを利用します。たとえば0度と180度の時のデータは表裏の関係ですがそこから得られるデータは透過データですから同じです。 ところが180度の位置に検出器がくる際、0度の位置と比べると検出器の半チャンネル分回転方向にずれるように配置しておきますと、すべての検出器で異なるデータを収集できるので、従来ずらさないで収集する方式と比べてデータを収集するポイントが倍になります。(データ サンプリング点が倍になります) これは2倍のデータ量、2倍のデータ精度ということになります。
この2つの原理によりデータ量で従来比4倍、データ精度も4倍となり、解像度0.25ミリを実現することができました。


4.共同研究先

 病院名 :医療法人 耳鼻咽喉科麻生病院(あざぶびょういん)
 理事長 :大橋 正實(おおはし まさみ)
 診療科目 :耳鼻咽喉科専科
 住 所 :札幌市東区北40条東1-1-7
 電 話 :011-731-4133


以 上

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